記憶の引き出しにある味を再現!
届けたい食で感じる「生きる喜び」
介護食と言えばペースト状であまり美味しくないというイメージが強かったが、最近では様々なものが発売され、農水省はやわらか食や介護食といった呼び方の統一を目指して「スマイルケア食」という愛称を打ち出した。
株式会社ふくなおも、咀嚼力が弱くなってきた高齢者の為に、様々なやわらかい食材や食品の開発を行っている。
食材の柔らかさはもちろん、味や見た目にもこだわり中には何年もかけて素材そのものの味や見た目を忠実に再現している。
例えばシイタケは、見た目は普通のシイタケのように見えるが、実際は歯ぐきでつぶせるほどの柔らかさ。やわらかさだけではなく味や見た目にこだわるのは、食べることで昔を思い出して欲しいという思いから。
代表取締役の西野美穂さんは、
「記憶の引き出しに残っている食べ物の味を楽しんでいただけます。食べる事を通して“生きる喜び”を伝えていきたい」
と話す。
<取材協力 / 株式会社ふくなお 代表取締役 西野 美穂さん>
業界初のあげもの食と魅せるおせち重
ふくなおの商品の中でも、「やわらか大エビちゃんの天ぷら」は、介護食業界で初の揚げ物として開発した。
柔らかい食感でありながら見た目はエビの天ぷらそのもので、目でみて食を楽しむ事が出来る。
開発のきっかけは、担当の管理栄養士が施設勤務時代、スタッフ総出で汗だくになって作った天ぷらを刻んで提供したところ、利用者さんからは残念な顔をされた経験から作る側の労力と食べる人の満足の差を埋めたい!という思いで、数年かけて商品化を実現した。
他にも人気商品として「やわらかおせち重」がある。これも“目で見て楽しい”豪華さで定番の品が美しく重箱に収められている。
西野さんは、
「お重というのは、開けて、あ!と思った時の感動だと思うんですね。
開けた時に、「なんだか茶色ばっかりだなあ」とか、どんな食材か分らないという気分にさせてしまっては、一年が幕開けにはふさわしくないので、商品の開けた時の色合いだったり、わくわくさせるような点にこだわって作りました。」
と話す。
家庭に届けたい!
少しでも介護者さんの気持ちを楽に!
株式会社ふくなおは、創業約60年の老舗メーカーのグループで、15年前から病院・老人ホームへ向けてやわらか食を製造・販売してきた。
食べた方から
「病院では食べられるけど、家に帰るとおいしいやわらかい食事が食べられない」
という声が聞いて、要望に応えたい!と一般の家庭でも使える、やわらか食材や食品の販売を開始した。
家庭でも簡単に食材をアレンジできるように、様々なレシピが紹介されているサイト
「cookpad」では、「やわらか食材」を使ったオリジナルレシピを200点近く掲載し、今も更新されている。
西野さんは、介護をしている方は忙しい時こうした市販のやわらか食を利用して、少しでも負担を減らして欲しいと語る。
「介護者にとって、介護をするのは本当に並大抵の労力じゃないんですね。
“食事”も介護の一部分ですが、こういう物(市販の介護食)の存在を知ってもらうだけでも気持ちが楽になると思います。
全ての食事をこれで埋め尽くすのは少し違うかもしれませんが、ちょっと手を抜きたい時や時間のない時に使うのはいいのではないでしょうか。
柔らかく料理するのは時間と労力と技術のいるので、少しでも介護者さんが楽になるということを発信したいと思います。」
と話す。
高齢者は様々な理由で食が細くなる事が多く、そうした介護者の悩みをサポートするために、ふくなおでは介護食の体験会、“口から食べること”の大切さ、介護食の良さや技術を広める活動も精力的に行っている。
自分が望む将来に!
いろんなメーカーの種類から選べる社会に!
西野さんは、これからはやわらか食も様々な選択肢が増える時代になればと語る。
「やわらか食をいろんなメーカーが様々な商品を出して、多くの中から好きなものを選べるというのが本来の高齢化に対応した社会で、 “高齢者だから選択肢がない”というのはどこか不公平に感じます。
たくさんの商品の中から選んだ方が、届いた時のワクワク感は大きいですよね。
だから、色々なメーカーから商品がたくさん出て、それぞれの柔らかさや味や見た目があって、もっと選べる社会に近い将来なればいいなと思います。」
自分がもしやわらか食が必要になったとき、選べるようになってほしいという思いが新たな商品の開発につながる。
食の好みは特に人それぞれ。介護者が少しでも楽になることはもちろん、高齢になっても食べるものを選択できる社会が求められている。
<関連動画>
介護食のおせち 大阪発【やわらかおせち重】
介護食の【やわらかおせち重】を開発したその経緯とは!?
取材日:2014年11月12日
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